先週は相場の景色が一変した週でした。
週前半、ドル円は160円台から一気に155円台へ急落する場面がありました。きっかけの一つは、ベッセント米財務長官が「日本はリフレ政策をやめるべき」と発言したとの報道。米財務長官が日本に金融引き締めを要求するという異例のコメントで、日米協調円高の思惑が一気に強まりました。
また植田日銀総裁が退院後の講演で「物価の上振れリスクに従来以上に注意が必要」と発言。氷見野副総裁も「利上げの余地はある」というトーンを示しており、日銀の10月連続利上げ観測が市場で急速に高まりました。
そこへ金曜夜のNFPが+16.2万人と予想(+5.8万人)を大幅に上回る結果。さらに7月分も−2.3万人から+2.1万人、6月分も+2.0万人から+3.1万人へ大幅上方修正されており、「前回の雇用ショック」がほぼ打ち消される内容でした。
発表直後のドル円は156円75銭まで急騰しましたが、日銀利上げ観測と介入警戒感から155円34銭まで反落して週末クローズ。9月FOMCの利上げ織り込みは52%から58%へ上昇しています。
「強いNFPでもドルが買われ続けない」——これが今の相場の本質で、日米の金融政策が両方タカ派という珍しい状況を反映しています。
今週は木曜のECB利上げと金曜の米CPIという二大イベントが控えており、9月FOMC(15〜16日)前最後の重要データが揃います。
トレーダーruka川上インフレとは、生産・流通の上流段階(川上)で起きる物価上昇のことです。
経済の流れをイメージすると分かりやすいです。
川上(上流)
原材料・エネルギー → 企業物価(PPI)
川下(下流)
製品・サービス → 消費者物価(CPI)
PPIを見て、その後のCPIへの波及を先読みしましょう。
🗓 9/7(月)
🇺🇸🇨🇦 米国・カナダ 休場(レイバーデー)
08:50 🇯🇵 日本 8月外貨準備高
18:00 🇪🇺 ユーロ圏 2Q GDP確定値(前期比、予想 +0.4%)
米国とカナダが同時に休場で流動性が薄い週明け。日本の外貨準備高から8月の介入規模が確認できる可能性があります。先週の155円台への急落が介入によるものか、思惑だけで動いたものかを判断する材料の一つになります。
🗓 9/8(火)
08:30 🇯🇵 日本 7月現金給与総額(前年比、予想 +3.9% 前回 +3.4%)
08:50 🇯🇵 日本 2Q GDP改定値(年率換算、予想 +1.8% 速報 +1.1%)
–:– 🇨🇳 中国 8月貿易収支(予想 1,233.0億ドル 前回 1,125.0億ドル)
今週前半の注目指標が揃う火曜。
日本GDP改定値は速報の年率+1.1%から+1.8%への大幅上方修正予想で、法人企業統計を織り込んだ結果として設備投資の強さが反映されそうです。これが確認されれば「日本経済は利上げに耐えられる」という根拠が強まります。
現金給与総額は+3.9%予想と前回+3.4%から加速見通し。日銀の求める「賃金と物価の好循環」が数字で示されれば、10月利上げ観測は一段と固まります。
🗓 9/9(水)
10:30 🇨🇳 中国 8月CPI(前年比、予想 +0.9% 前回 +0.5%)
10:30 🇨🇳 中国 8月PPI(前年比、予想 +3.7% 前回 +3.5%)
指標は軽めの一日ですが、中国PPIの加速が確認されれば原油高の波及が中国の製造業コストにも広がっていることが示され、豪ドルや人民元の動きに影響します。木曜ECBと金曜CPIに向けた静かな前哨戦として、全体のリスクセンチメントを確認する日です。
🗓 9/10(木)
21:15 🇪🇺 ECB 政策金利(予想 2.65% 前回 2.40%)
21:45 🇪🇺 ラガルドECB総裁 定例記者会見
21:30 🇺🇸 米 8月PPI(前年比、予想 +5.2% 前回 +4.7%)
21:30 🇺🇸 米 新規失業保険申請件数(予想 20.5万件)
今週前半最大のイベント、ECB。
2.40%→2.65%への0.25%利上げが予想されています。前回6月の利上げ(2.15%→2.40%)に続く追加利上げで、ユーロ圏HICPが+3.3%まで加速している環境では自然な流れ。達成なら素直にユーロ買い材料になります。
注目はラガルド総裁の会見でのトーン。「今後も追加利上げを続けるか」「原油高がインフレ継続の主因か」への見解次第で、ユーロの方向性が大きく変わります。
米PPIは+5.2%予想と前回+4.7%から加速見通し。翌日のCPI前哨戦として、川上インフレの根強さが改めて示されそうです。
🗓 9/11(金)
08:50 🇯🇵 日本 8月国内企業物価指数(前年比、予想 +7.4% 前回 +7.2%)
15:00 🇬🇧 英 7月月次GDP(前月比、予想 0.0% 前回 +0.3%)
21:30 🇺🇸 米 8月CPI(前年比、予想 +3.4% 前回 +3.4%)
21:30 🇺🇸 米 8月コアCPI(前年比、予想 +2.4% 前回 +2.5%)
今週最大のイベント、そして9月FOMC前最後のCPI。
前年比は前回と同水準の+3.4%予想ですが、前月比は+0.4%(前回+0.1%)と大幅加速予想。夏の原油価格の上昇がエネルギー項目に反映されることが主因です。一方コアは+2.4%(前回+2.5%)と若干の鈍化予想で、「ヘッドラインは上がるがコアは落ち着いている」というシナリオが基本線。
問題はウォーシュ議長が「物価の改善スピードを確信する必要がある」と言った直後の数字という点です。コアが予想以上に下がれば「インフレは改善方向」として9月利上げ観測が後退しドル売り、上振れなら利上げ確定でドル買い——という明確な二択になります。
9月FOMC(15〜16日)は来週に迫っています。今週のCPIがその最後のピースです。
■ 筆者のまとめ
先週は「NFP+16.2万人でもドルが最終的に下落した」という相場が示すように、今は「米国の利上げ観測」と「日本の連続利上げ観測+介入警戒」が真正面からぶつかっている局面です。
ベッセント財務長官の「リフレ政策をやめるべき」発言は非常に重要なシグナルで、米国が日本の金融引き締めを事実上後押しする姿勢を見せています。これが続けば、日銀が10月に追加利上げをしやすい環境が整い、年内に1.25%または1.5%という水準が視野に入ります。
今週のポイントは3つ。
- 金曜CPIが前月比+0.4%加速で9月FOMC利上げが確定的になるか
- ECBが2.65%に利上げして日米欧すべてタカ派という構図が鮮明になるか
- GDP改定値と現金給与総額が上振れして日銀10月利上げが既定路線になるか
来週9月15〜16日のFOMCが近づいています。今週のデータで9月利上げが確定的になれば来週さらに大きな相場が待っています。今週は無理にポジションを持つより、データを確認してから来週に備えるという戦略もありだと思います。
参考リンク
OANDA証券|8月米雇用統計の結果とドル円・金の見通し
→ https://www.oanda.jp/lab-education/market_news/nfp-2026-aug-review/
外為どっとコム|来週のドル円見通し 9/7〜9/11
→ https://www.gaitame.com/media/entry/2026/09/05/070000
ザイFX!|ドル円155円台 9月FOMC前最後のCPIに注目
→ https://zai.diamond.jp/articles/-/495158










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