FXでよく耳にする「円キャリートレード」。
実は世界中の投資家が使っている取引で、円安や急落の背景には必ずこの“円キャリー”が関わっています。
今は日米金利差が歴史的に大きく、日本の低金利を利用したキャリー取引が急増している時期。だからこそ、仕組みを知らないと突然の急落に巻き込まれる可能性があります。
この記事では、円キャリーの基本から仕組み、メリット・リスク、過去の巻き戻しまで分かりやすく解説していきます。
円キャリーとは?
円キャリートレードの内容とは
円キャリーは「円を売って高金利通貨を買う」だけではなく、実際にはさまざまな“形”で行われています。今回は代表的な円キャリートレードを具体的に挙げていきます。
① 円を借りてドルに替え、米国債に投資する(最も王道)
- 日本円を低金利で借りる(例:0.5%)
- 円を売ってドルを買う
- 米国債(4%前後)を購入
- 金利差(約3〜3.5%)が利益になる
➡ 世界中のファンド・銀行がやっている 基本の円キャリー
② 円を売ってドルを買い、米株へ投資する(株式版キャリー)
円借り → ドル買い → 米株
という形の“間接的キャリー”も多いです。
米株は利回り(配当)+株価上昇が狙えるため、金利差+株高が狙える人気パターンです。
トレーダーruka
NISAの資金流入は、最終的に 株式市場(特に米株)にお金が集まりやすくなります。
それが結果として 「円 → 外貨 → 米株」 という “間接キャリー”の流れを強めます。
つまり、NISA=円キャリーが増えやすい環境を作っている制度
と言えます。
③ 円を売って高金利通貨(豪ドル・メキシコペソ)を買う FXキャリー
FXトレーダーはスワップという金利差を考えて通貨の取引をしています。
例えば
- 豪ドル(AUS)金利:4%〜
- メキシコペソ(MXN)金利:9%〜
- トルコリラ(TRY)金利:高金利通貨の代表
これらを買うだけでスワップ(金利差)が毎日つきます。
➡ FX初心者は持っているだけでプラスになることから円キャリー。
ただし 急落時の損失が大きくて危険 なのもこのタイプ。
④ 円を借りて米ドルを買い、ドル建てMMFに入れる(低リスク版)
「ドルの安全な置き場所」+「年4〜5%の利回り」がセットになっている投資信託のようなサービスになります。
- 円(0.5%)を持っている
- ドルに替える(円売り・ドル買い)
- ドルMMFに入れる(利回り4〜5%)
→ 金利差がそのまま“キャリーの利益”に近い形になる。
つまりスワップを取る代わりにMMFで金利を取るという手法になります。
スワップよりもリスクは低いが、為替リスクは残ります。
⑤ 円を借りてドルに替え、ドル建て社債を買う(機関投資家向け)
プロがよくやる手法です。
- 円を借りる
- ドルに替える
- 高利回りの社債(ハイイールド債など)を買う
→ 金利差+債券のクーポンで利益が出る
リスクは
- 為替
- 債券価格
- 発行企業の信用リスク
など複数あるため“上級者のキャリー”になります。
⑥ 円を売ってドルを買い、米ドル預金だけでもキャリーになる
米国の預金金利は数%あるので、円借り(0.5%) → ドル預金(4〜5%)だけでキャリーになる。
特に今(2025年)は、預金金利自体が高いので“預金キャリー”が成立しています。
海外に銀行口座を持つ人も増えてきているのは、この金利にも理由があります。
⑦ 円を借りてドルでBTC(ビットコイン)を買う「暗号資産キャリー」
最近増えているのが仮想通貨の円キャリートレード。
円金利が安い → ドルに替える → BTC買い
ドルの金利+BTC上昇の二重取りを狙う。
ただし
- ボラティリティ(変動が激しい)
- レバレッジリスク
- USD金利の高さ



相場急変時の巻き戻しが激しく、何かニュースがあるとビットコインから先に急落すること(円キャリーの巻き戻し)が多いので仮想通貨市場が安定するまでは大きく資産を失う可能性が高いです。
⑧ 銀行・ヘッジファンドが行う高レバレッジ版キャリー
円キャリートレードは、円を借りて外貨を買う取引です。
“借りた円 × 数十倍レバレッジ”で外貨債券・株式・通貨に投資。
大手銀行やヘッジファンドは、レバレッジをかけて非常に大きな金額で円を売っています。
しかし、日銀の利上げ観測やリスクオフが起きると、彼らは一斉にポジションを閉じるため、大量の“円買い”が発生します。
この動きは政府の為替介入ではないものの、チャート上では介入のように見えるほど強烈な円高になることがあります。



介入とは違いますが、市場に最も影響が大きいのはこの円キャリーになります。
実際、介入前に介入の情報が入ると大量の売りが入り急落することがあります。
円キャリーの仕組みのまとめ
- 円を借りる(日本の金利は低い)
- 円を売る
- 高金利通貨(ドル・豪ドルなど)を買う
- 国債や資産に投資
- 金利差(キャリー)が利益になる
➡ 円が売られるほど、円安になりやすい



円を売る → 外国通貨を買う → 需給で円安が進みやすい。
今の円安の大部分は、この“金利差&円キャリー”が背景にあります。
投資家が円キャリーをする3つの理由
① 日本が超低金利だから
過去20年以上ほぼゼロ金利。→ 世界最安の“借りやすい通貨”。
② 市場規模が大きく、流動性が高い
円は世界で4番目に取引される通貨。
③ 過去の“安全資産”イメージ
ヘッジとして扱われることも多い。
最大のリスクは“円の巻き戻し”
円キャリーは利益が安定しやすい一方で、一度巻き戻しが起きると、急落が止まらないことが多いです。
巻き戻しが起きる場面は
- 日銀が突然利上げ
- 為替介入
- 世界の株価急落(リスクオフ)
- 大手ファンドがポジション解消
- 要人発言で金利差縮小が意識されたとき



この時、投資家は一斉に「円を買い戻す」
→ ドル円が1〜5円レベルで一気に落ちることがあります。
2022〜2024年の急落は、ほぼ円キャリーの巻き戻しが原因です。
✍️ 筆者のまとめ
円キャリートレードは今の円安を形作っている大きな要因ですが、同時に急落の原因にもなります。
金利差が大きい時はどんどん円が売られますが、その反動は本当に大きく、過去にも突然の巻き戻しで大きな損失を抱えた投資家はたくさんいます。
今回の日銀の利上げ観測は、この“巻き戻し”につながりやすい局面。
短期でも中長期でも、今は金利差と日銀の政策がもっとも重要なテーマになると感じています。
このブログでは、今後も金利の動きと円キャリーの変化を丁寧に追っていきたいと思います。










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