昨夜は、米国の主要経済指標とFOMC関係者の発言が重なり、為替市場を大きく揺さぶる一日となりました。
GDPの上方修正や新規失業保険申請件数の減少といった数字の強さに加え、FRB理事や連銀総裁の発言も相場の方向感に直結する内容で、市場は敏感に反応しました。
今後は米国経済の行方だけでなく、インフレ指標や地政学的リスク、さらには国内の総裁選なども相場材料となってきます。
昨日の主要な米国経済指標・データ
昨夜は2つのアメリカ指標発表がありました。結果を整理しましょう。
指標 | 発表時刻(米国/日本時間換算目安) | 結果 | 市場予想 | 前回値 | 意義・インパクト |
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新規失業保険申請件数(9/20 週) | 21:30 ET(日本時間 翌日 9:30ごろ) | 21.8 万件 | 23.2 万件(または 23.3 万件など予想) | 23.2 万件(修正値) | 予想を明確に下回る「好結果」。 |
継続失業保険受給者数 | 同時期 | 192.6 万人 | 193.2 万人(または予想) | 前回 192.8 万人(修正含む) | 多少改善。受給者数も減少傾向。 |
米国 第2四半期 GDP 確報値 | 発表(米商務省) | 年率+3.8%(上方修正) | 改定値+3.3%(あるいは予想+3.3%) | 以前発表された確定値または改定値 | 個人消費が強く、全体を押し上げる形で上方修正。 |
その他補助的指標 | 耐久財受注、卸売在庫、貿易収支 等 | 耐久財受注 前月比 +2.9%(改善) / 卸売在庫 前月比 –0.2%(やや減少) / 貿易赤字幅縮小(–855億ドル) | — | — | 総じて米景気を下支えする材料。特に耐久財受注の改善は投資・発注動向の鮮明な改善を示す可能性。 |
- 失業保険申請件数が予想を下回る好結果 → 労働市場がまだ底堅さを維持。
- GDP 確報値が上方修正 → 経済成長の下振れ懸念が和らぐ。
- 補助的指標も総じて悪くなく、強めの印象を後押し。

結果は予想より良く底堅いデータという印象を受けました。
昨夜のFOMC要人発言まとめ
指標だけでなく、FRBの市場心理を揺さぶる発言もいくつかあるので、主なものを整理していきましょう。
発言者 | 主な発言内容 | 意図・含意 | 市場反応・注目点 |
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ミラン FRB理事 | – 金利水準は “1.50–2.00% あたり” は抑制的だと考える – 他の理事よりも成長に対して楽観的な見方 – 今後 6 ヶ月で中立金利に近づけたい – 住宅関連のインフレは 6-12 か月で低下見込み | 比較的タカでもハトでもないが、インフレ圧力の緩和期待も匂わせており、「利下げ余地も視野に」の方向性を示唆 | 発言自体は強く利下げを急ぐというよりは慎重なニュアンス。ただし市場としては「金利を引き下げられる余地があるかも」という期待をくすぐる要素。 |
シュミッド・カンザスシティー連銀総裁 | – 現行金融政策スタンスは “わずかに景気抑制的” だと考える – 0.25% 利下げはリスク管理上、合理的だったという見方 – インフレは依然高すぎるという認識 – FRBの監督役割縮小などの動きは誤った方向性、独立性の重視を強調 | 利下げを強く訴えるタイプではないが、政策スタンスの「引き締め過剰リスク」に注意を促すコメント | 経済を見ながら利下げも視野に入れるが、焦って動かす必要はないという姿勢。市場としてはこれも「利下げ期待を完全に切れない」根拠になる。 |
その他理事・総裁発言 | シカゴ連銀総裁、ウィリアムズ NY 連銀総裁、ボウマン FRB副議長、バー理事、ローガン(ダラス連銀総裁)、デイリー(サンフランシスコ連銀総裁)らの発言機会ありと報じられていたが、個別の大きなリスク発言が目立った報道は現時点では少ない。 | — | 今後の発言に注目する必要。特にインフレや労働市場を見て、理事間で見解のズレ(ハト vs タカ)をどう整理するかが焦点。 |
極端なタカ派(利上げ志向)ではなく、中立~ややハト寄りのトーンを崩さないというスタンスで発言をコントロールしているように見えます。
ドル円はなぜ1円上昇したのか
米国経済の強さを再評価
昨日は、予想を上回るGDP上方修正と、失業保険申請件数の減少という2つの大きな材料が揃いました。
これまで下方修正や弱い雇用指標が目立っていた中で、あらためて米国経済の底力が示された格好です。
結果として「アメリカ経済は想定以上にタフ」という評価が市場に広がり、ドル買いが一気に進行。
ドル円は短時間で約1円上昇しました。



ドル円は2、3時間で1円上昇しました。8月から続く長いレンジを上抜けした形になります。
利下げ後退の思惑
・直前までの状況
9月のFOMCでは「0.25% 利下げ」が実施され、政策金利は 5.00–5.25% → 4.75–5.00% に下がった。
これにより「FRBは景気減速を懸念して利下げモードに入ったのでは?」という観測が広がっていた。
・指標後の状況
GDP が 上方修正(3.8%成長)
新規失業保険申請件数も 予想を下回る強さ
耐久財受注もプラスと堅調
この結果から年内利下げ後退か?と市場が反応したと思われます。
筆者のまとめ✍️
今年に入ってからは、米国経済に関して「下方修正が続くGDP」や「著しい失業率の悪化」「雇用環境の低下」、さらに「物価高やサービス業アンケートの弱さ」などを背景に、追加の利下げが1回や2回はあるのではないかというのが通常の見方でした。
ところが今回のGDP上方修正や失業保険申請件数の改善を受けて、**「アメリカ経済は予想以上に強いのではないか」**という見立てが一気に広がったように感じます。
テクニカル的にも、8月から約1か月半〜2か月ほどレンジで推移していた相場が、今回の指標をきっかけに上にブレイクし、上昇トレンドを形作り始めた印象です。
日足チャートでは大きな上ヒゲを残して反落する可能性もありましたが、結果的に上昇したまま日足が確定し、相場の流れが変わった兆しが出てきました。
残り3か月の相場も、もちろん新たな材料次第で急変するリスクはあります。
しかし、このまま米国経済の強さが続くのであれば、株式・為替ともに再び高値を目指す動きになる可能性も考えられます。
その際には、トランプ大統領の発言や政策、日本国内の総裁選や次期政権の動向なども重要な相場材料となるでしょう。
引き続き、冷静に全体像を把握しながら相場を見ていきたいと思います。


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