2025年、アメリカは再び大規模な関税を導入しました。トランプ政権の政策として、中国やメキシコなど特定の国からの輸入品に追加関税が課され、短期間で大きな税収を生んでいます。
実際、2025年の関税収入は8月時点で約880億ドルに達し、通年では2,000億ドルを超える見込みと報じられています。これは過去最高水準に迫る規模です。
最新の関税施策
直近では以下の品目に関税がかかっています。
- 中国からの鉄鋼・アルミ製品
- 家具や自動車部品
- 一部の半導体関連製品
- 太陽光パネルや電気自動車用バッテリー
- 医薬品や医療機器
これらは「アメリカ国内の製造業を守る」名目ですが、消費者や企業に負担が波及しています。
関税は誰が負担しているのか
関税は「輸入業者(企業)」が政府に直接納めます。
ただし最終的には価格転嫁されるため、消費者が高い値段で商品を買う形になり、実質的に国民負担となります。
収入はアメリカ連邦政府の歳入として計上されます。

つまり「政府の収益」ですが、裏側では企業と消費者が負担しているのです。
各セクターへの影響
- 製造業:原材料コストが上昇。特に鉄鋼や部品の価格が重くのしかかる。
- 小売業:家具や日用品など生活必需品の価格が上がり、消費者心理を冷やす。
- エネルギー・環境:太陽光パネルやバッテリー関税で、EVや再エネ関連の価格上昇。
- 医薬品:薬価が上がる可能性があり、医療コスト全体に波及。
関税収入の推移
過去の関税収入はどうだったのか
年度(Fiscal Year) | 関税収入(Customs Duties, 輸入関税+その他関税等) | 備考 / 出典 |
---|---|---|
2022 | 約 108.2 十億ドル | USAFactsによれば2022年がピークの収入水準。(USAFacts) |
2023 | 約 80 十億ドル | FY2023の関税収入=80 十億ドル。(Progressive Policy Institute) |
2024 | 約 77 十億ドル | FY2024の関税収入 = 77 十億ドル(2022年比で28.8%減)(USAFacts) |
2025(8月時点累計) | 約 165.2 十億ドル | FY2025年8月時点での累計関税収入。(USAFacts) |
2025(通年見込み/予測) | — | 現時点で正式な通年値は確定せず、報道による予測や見積もりのみ。 |
🔍 2022年に関税収入が高かった背景
- FRED(アメリカ連邦準備銀行の統計)によれば、関税・輸入課税を含む「Taxes on production and imports: Customs duties」の収入は 2022年に 約 102.333 十億ドル に達している。FRED
- これは、前年度に比べて関税引き上げや追加関税の拡大が効いていたことを反映していると見られる。たとえば、トランプ政権時から始まった「対中関税」やその他輸入品への追加関税が継続しており、それらが収入を押し上げた。
- ただし「最高収入年」という点では、「102.3 十億ドル(=約1,023億ドル相当)」という数字がしばしば「関税による最高収入」の見出しで引用されている。FactCheck.org
- ただし、これが “カレンダー年” なのか “会計年度(財政年度)” なのか、あるいは「正味収入(関税返却・リベートを差し引いた後)」かで、実際の意味合いは変わってくる。
🏛 トランプ大統領就任年(2017年頃)の関税収入はどうだったか?
- トランプ政権が本格的に関税政策を拡大し始めたのは2018年以降。「貿易戦争」の始まりで、鉄鋼・アルミへの関税、対中関税などが次々と導入された。
- 2017年は、まだ関税収入が急激に跳ね上がる前の段階。従って、その年に「爆発的な関税収入」があったというデータは目立ってない。
今後のリスクと展望
- 企業コスト上昇 → インフレ圧力が再燃する懸念
- 消費者価格上昇 → 個人消費の冷え込みリスク
- 関税収入は一時的に潤うが、長期的には「経済全体の減速リスク」を抱える



結果としてインフレと景気減速のリスクが並行して進み、長期的にはアメリカ経済の成長を押し下げる可能性が高いです。
筆者のまとめ
今回の関税収入は確かに巨額で、政府の歳入面ではプラスです。
しかし、支払っているのは最終的に企業や消費者です。私は、この状況を「短期的な税収確保」と「長期的な経済減速リスク」の両刃の剣だと考えます。
とくに、生活必需品や医薬品への影響は国民に直撃しますし、企業の競争力低下も避けられません。結果的に**「関税収入の記録更新」が「アメリカ経済の健全さ」とは必ずしもイコールではない**点を意識して相場を見るべきだと感じます。
2017年からの流れを振り返ると、トランプ政権下の政策が2022年の関税収入を押し上げた背景になっていると見られます。
やはりトランプ氏にとって関税は「使いやすいカード」であり、経済が不調なときの補填手段として繰り返し持ち出される印象です。
これは不動産ビジネスで培った視点から「収入源を補う必要がある」という発想なのかもしれません。
最近は一度落ち着きを見せたものの、新たな関税を検討する発言も出てきており、再び市場の不安を招いています。
関税強化は結局アメリカ国内だけでなく、世界的な経済の冷え込みにもつながる可能性が高いため、今後の動向を注視する必要があると感じます。
参考リンク
- 米国国勢調査局(U.S. Census Bureau)貿易統計
👉 https://www.census.gov/foreign-trade/statistics/historical/index.html - 米国通商代表部(USTR)関税政策の概要
👉 https://ustr.gov/ - Peterson Institute for International Economics (PIIE) 関税影響分析
👉 https://www.piie.com/topics/trade-and-investment/tariffs - Reuters – 米国関税に関する最新ニュース
👉 https://www.reuters.com/


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