ADP雇用統計は、米国の給与処理大手ADPが「給与処理データ」を基に公表する民間部門雇用者数の増減を示す指標です。
毎月発表される政府統計(NFP=非農業部門雇用者数)よりも数日前に出るため、雇用市場の“先行シグナル”として投資家が注目しています。
ただしNFPと必ずしも一致するわけではなく、雇用の方向感を見るための補助指標として扱われています。
昨夜の結果
- ヘッドライン:▲32,000人(前月:+54,000人→▲3,000人へ下方修正)
- 前月(8月分)は当初 +5.4万人とされていましたが、改定で ▲3,000人 へと下方修正されました。
9月分で“予備ベンチマーク”を実施し、過去月も含め調整。結果として8月はプラスからマイナスへ修正され、労働需給の弱さが一段と鮮明に。
今回のADPの詳細
- サービス関連の停滞が目立ち、中小企業の雇用が弱い構図。製造や建設は一部で底入れの兆しも、全体を支え切れず。
- 企業の採用姿勢は「慎重化」へシフト。

「ヘッドライン」という言葉は経済指標やニュース記事でよく使われます。
意味はシンプルで、✔ 一番最初に出てくる“見出し数値”や“全体の大枠を示す数値”のことを指します。
市場の反応
ADPの弱い結果、そして同時に進んでいる米政府閉鎖の影響で雇用統計(NFP)や新規失業保険申請件数が発表されないことが重なり、市場は大きく動きました。
- 為替(ドル円):発表直後に0.7円規模の急落。その後もドルは不安定な展開。
- 株式市場:利下げ観測が強まり、株式には買いが入り上昇。特にヘルスケアや公益株などディフェンシブ銘柄が堅調。
- 米国債利回り:雇用の弱さから低下。安全資産需要の高まりも後押し。
- ゴールド:不確実性の高まりから上昇し、安全資産としての需要が強まった。
NFP・新規失業保険は“発表停止”(政府閉鎖の影響)
- 雇用統計(NFP):BLS(労働統計局)は政府閉鎖のためデータ収集・処理・公表を停止。10/3(金)予定の9月分NFPは出ません(再開後に順延)。Bureau of Labor Statistics+3Reuters+3CBSニュース+3
- 新規失業保険(毎週木曜):労働省は週次の失業保険統計も公表停止。本日のリリースは非公表となりました。Reuters+1
現在、米政府閉鎖の影響で雇用統計や失業保険申請件数の発表が止まっており、最新の労働市場データはADP雇用統計とISMということになります。
いずれもとても良い結果ではなかったこともあり、データ空白期間への不安感が一層強まっています。
筆者のまとめ
今回のADP雇用統計は、数字の弱さだけでなく「政府閉鎖による公式統計の停止」という異例の状況も重なり、市場に強い混乱をもたらしました。
短期的には利下げ期待が株を押し上げる一方、ドルや金利は下落し、ゴールドが買われるというねじれが発生しています。
アメリカの実態経済が弱まりつつあることは明らかで、今後も利下げが年内に追加される可能性は高まっています。
ただしトランプ政権の政策意向(ドル安・金利抑制・株高志向)と実態経済の乖離は大きく、このままではアメリカの持続的な成長力に疑問が生じる局面も出てくるでしょう。
投資家としては、短期的な相場の乱高下に惑わされるのではなく、守りの資産としてゴールドを一部組み込み、為替のボラティリティに備えることが重要だと考えています。
参考リンク
- ADP公式:9月は▲32,000人、8月は+54,000→▲3,000へ下方修正(予備ベンチマーク実施)。PR Newswire+1
- BLS/NFP:10/3の雇用統計は政府閉鎖で停止(データ収集・公表中断)。Bureau of Labor Statistics+3Reuters+3CBSニュース+3
- 新規失業保険(DOL):政府閉鎖時は週次統計を公表せず。本日のリリースは非公表。Reuters+1
- 市場反応(株・為替):弱いADPと政府閉鎖でドル安/金利低下、株は利下げ期待で上昇。Reuters+1


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