2025年11月5日、日本時間の22:15にアメリカの「ADP民間雇用者数(10月分)」が発表されました。
結果は +4.2万人 と市場予想の +3.8万人 を上回り、「雇用回復の兆し」として市場は一部でポジティブに捉えています。
しかし、同じアメリカでは 政府閉鎖(シャットダウン)が36日以上続いている という異例の事態も同時進行中。
この背景を踏まえると、“雇用が回復した”という見方だけでは見落としてしまう、大きな構造変化があります。
本日のADP雇用統計:結果(2025年10月分)
アメリカ・ADP雇用者数
- 発表日時: 2025年11月5日 22:15(日本時間)
- 前月比(10月分):
予想: +3.8万人
結果: +4.2万人 ← 予想上回る - 前回(9月分): -3.2万人(雇用減)
- 前回改定値: -2.9万人(当初発表 -3.2万人 から修正)
- ドル円変動幅(前回発表時): -29.6pips(=前回はやや円高方向に影響)
政府閉鎖が起きているのに、なぜADP雇用統計は普段通りに発表されたのか?
ADP雇用統計は「民間企業のデータベース」に基づいているから
🔍 ADPとは?
ADP(Automatic Data Processing)はアメリカの 民間企業 です。
給与計算や雇用管理システムを手掛けており、自社のクライアント企業(民間約25万社)の給与データを元に雇用統計を算出しています。
💡 政府閉鎖の影響を受けない
- ADPの雇用統計は 政府(連邦機関)のデータや人員に依存していない
- 閉鎖中に停止するのは「公的サービスや公務員の給与・発表」など
- 一方ADPデータは 独自データ を使っているため、閉鎖中も通常通りのタイミングで発表が可能
✅ 一方、「雇用統計(NFP)」は支障が出る可能性も
毎月第一金曜日に発表される 米国労働省の「雇用統計(非農業部門雇用者数/NFP)」 は、 政府機関によって運営されているため、政府閉鎖が長引くと発表が遅延・停止する可能性があります。
過去にも政府閉鎖によって、NFPやCPI(消費者物価指数)、GDP速報などの経済指標が遅れたりキャンセルになった例があります。
🌐 ADP雇用統計 × 米国政府閉鎖という今の背景
現在アメリカでは、2025年10月1日からの政府閉鎖が30日以上続くという異例の事態が起きています。
この影響は公務員と公共サービスだけでなく、「景気全体を冷やしやすい」「雇用者の信用不安」「個人消費減退」などとして、民間雇用にも波及する懸念があります。
今回の雇用回復は安心材料ではありますが、政府閉鎖が景気・労働に波を立てる形で続けば、今後の雇用改善が停滞する可能性もあります。
具体的には以下のような深刻な影響が発生しています。
- 約67万〜90万人以上の連邦職員が「休職(furlough)」状態
- 約73万人以上の職員が無給で勤務を継続中
- 給与遅延やバックペイの不確定性により、生活に不安を抱える声多数
- 一部機関では、人員整理(レイオフ)の検討も進行
政府閉鎖は、公務員の収入だけでなく、公共サービス停止、契約企業の収益減少、消費の鈍化など、“民間雇用”にも波及していくリスクが指摘されています。
今回のADP結果がプラスに転じたとはいえ、「雇用回復が続くかどうか」は引き続き注意が必要です。
✍️ 筆者まとめ
今回発表されたADP雇用統計は、他の主要経済指標が1ヶ月以上発表されていない状況下で、特に注目度が高いものでした。
結果は市場予想を上回る +4.2万人 でしたが、相場は大きく反応せず、為替も限定的な値動きに留まりました。
その背景にあると考えられるのが、米国政府閉鎖による“現実との乖離” です。
実際のアメリカでは、今も多くの政府職員が給料を受け取れないまま働いていたり、休職を余儀なくされています。
「数字としての雇用は回復している」という解釈ができる一方で、現場の生活は追いついていない――このギャップが市場心理に影響していると感じています。
また、株式市場では「年内の利下げはもう無い」という見方から楽観ムードが続き、ドル円も円安方向へ固定化されつつあります。
ですがこれは “数字だけを見た相場” が支配している状態 であり、実態経済とはズレが生まれ始めているように見えます。
✅ 数字と現実が乖離したとき、最も起こりやすいのが“バブル崩壊型の調整”です。
もし今ポジションを持っていないなら、「なんとなく乗る相場」ではなく「資金を守る相場」 に徹するべきだと私は考えています。
一定ラインを超えて市場が過熱した場合、私はむしろ“大衆とは逆”の方向を意識するつもりです。
さらに、あさって予定の 米雇用統計(NFP) は、政府閉鎖の影響で発表されない可能性が高く、今市場が判断できる材料は ADPの数字しかない状態 です。
だからこそ、今の相場は「不自然な楽観」が広がっていて、方向性を見誤りやすいと感じています。
参考リンク
ADP雇用統計(定義・最新動向)
米国政府閉鎖(状況と影響)


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