はじめに
2025年7月現在、米国の株式市場やビットコインは史上最高値を更新し、マーケットには明るいムードが広がっています。しかし、この上昇は本当に健全なのでしょうか?過去の事例や現在の経済指標を踏まえ、「楽観の根拠」と「潜むリスク」を考察します。

ずっと上がり続ける相場はないよ!


H2:2025年7月、株・ビットコインが“過熱感”を見せている理由
H3:S&P500・NASDAQ・BTCが最高値更新
米国主要株価指数であるS&P500やNASDAQ、そして暗号資産の代表格であるビットコインは、連日史上最高値を更新しています。中でも、ビットコインはETF承認以降、機関投資家の資金流入により急騰しています。
しかし買われすぎ水準まできています。


H3:好調な企業決算とAI期待
GAFAMなどのビッグテック企業を中心に、2025年Q2の決算発表は予想を上回る好調さ。特にAI関連事業が牽引しており、業績の上方修正が相次いでいます。下記のように投資資金流入が止まりません。
プレイヤー | 投資先 / パートナー | 主な目的・内容 | 投資額 |
---|---|---|---|
OpenAI | CoreWeave(クラウドGPU企業) | 計算資源の拡充(AI開発の基盤) | $40 B(資金調達) $11.9 B(CoreWeave契約) |
SpaceX→xAI | xAI(MuskのAI企業) | AIチャットボット「Grok」開発・AI研究 | $2 B(SpaceX) |
Musk Businessラウンド | xAI | シリーズA調達でハード&ソフト強化 | $5 B |
Stargate LLC | OpenAI × SoftBank × Oracle等 | 米国・UAEに10拠点の次世代AIデータセンター建設 | $500 B(2025〜2029年) |
サウジ・UAE | Humain・G42など | 国家主導のAIデータセンター構築、Nvidia等と協業 | 数十億〜数十兆円規模 |
EU・フランス | EU国家、スタートアップ、大学 | AIギガファクトリー建設、AI人材育成、研究開発支援 | ≥€110 B〜€200 B級 |
H3:米国経済が“ソフトランディング”へ向かっているという期待
インフレ率は徐々に落ち着きを見せ、FRB(米連邦準備制度理事会)の利上げ終了観測が高まっています。失業率も安定しており、“景気後退を伴わない着地=ソフトランディング”への期待が、投資家心理を支えています。
FRB(アメリカの中央銀行)が進めてきた利上げによる景気減速がうまく作用し、インフレが徐々に落ち着いてきたことで、「米経済はハードランディングを避けられるのでは?」という期待が広がっています。これが、金利引き下げ期待と株高を同時に生み出しています。
しかしここで疑問が出てきます。現在米国債の金利は急騰しています。
金利が上がっているのは「今の経済指標が強すぎる」から
- 雇用も堅調、インフレも粘着的。
- FRBは「まだ利下げできない」と市場に伝えている。
- 結果:長期金利は上昇。
H2:ソフトランディングが成功した事例は少ない
H3:ソフトランディングとは何か?
「ソフトランディング(Soft Landing)」とは、インフレを抑制しながら、景気を後退させずに経済を穏やかに着地させることを意味します。
つまり、景気後退(リセッション)を回避しつつ、過熱した物価上昇を沈静化できる理想的な政策運営です。
しかし、これを実現するのは非常に難しく、過去の歴史を見ると成功例はごくわずかです。
H3:過去のソフトランディングの成功例
代表的な成功例は「1994〜1995年」の一度のみとされています。
その他の利上げ局面では、2000年のITバブル崩壊、2008年のリーマンショック、2020年のコロナショックなど、いずれも景気後退を引き起こしています。
- ✅ 1994–95年:唯一に近い「ソフトランディング」成功例。
- 🟠 2018–19年:穏やかな減速(Mild Landing)。
- ❌ 2000年:ITバブル崩壊
- ❌ 2008年:リーマンショック
- ❌ 2020年:コロナショック
このように、歴史的に見てもソフトランディングの実現は難易度が高く、むしろクラッシュ(急落・暴落)につながったケースが多いのが現実です。
H2:今後のマーケット動向にどう備える?
H3:過熱感がある今こそ、慎重な視点が必要
株価が上昇している今こそ、過去の失敗例に学び、冷静なリスク管理が重要です。
一見すると「このまま持ち続けていればいいのでは?」と考えがちですが、実はこのタイミングこそ資産配分の見直しが重要です。
- 楽観ムードが強い=下落リスクも高まっている
- 利益が出ている今だからこそ「利益確定」も一案
- 金利上昇・為替変動など、マクロ環境の変化にも備える
H3:分散投資・現金比率の見直し
利益確定を意識したポジション調整や、リスク資産と現金のバランスを見直すタイミングかもしれません。
ポートフォリオとは「資産のかごの中身」。基本的な分類は以下のとおり
- 株式(国内/海外)
- 債券(長期/短期)
- 現金・預金
- コモディティ(ゴールド・原油など)
- 仮想通貨(BTC/ETHなど)
おわりに
現在の市場は、期待と現実が入り混じる“過渡期”にあります。楽観ムードに流されず、歴史を学びながら柔軟な資産形成をしていくことが、これからの投資家に求められる視点です。
2025年7月現在、市場は「AI革命」や「ソフトランディング期待」というポジティブな材料に支えられ、歴史的な上昇局面を迎えています。S&P500やNASDAQ、ビットコインの最高値更新は、確かに経済の好転を示しているように見えるかもしれません。
しかし、過去を振り返れば、“期待先行”の相場には必ず反動が伴ってきました。
- AI関連投資は、今や国家や巨大企業を巻き込む「覇権争い」。
- ソフトランディングの実現は、歴史的にも難易度が高い。
- 金利上昇やインフレの粘着性、そして地政学リスクは依然として残る。
こうした背景を冷静に見つめることで、いま市場に漂う「安心感」の裏側にある不安定さにも目を向けることができます。


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