FXや株式市場では「CPI(消費者物価指数)」や「雇用統計」といった経済指標が注目されますが、
実はその少し前に発表される「ベージュブック(Beige Book)」も、FRB(米連邦準備制度)の政策を占う上で重要なヒントになります。
この記事では、ベージュブックの仕組み・発表スケジュール・過去の傾向・相場への影響を分かりやすく整理します。
💡 ベージュブックとは?
ベージュブックとは、FRB(米連邦準備制度理事会)が年8回公表する、全米の経済状況に関する地域別報告書です。
正式名称は
“Summary of Commentary on Current Economic Conditions by Federal Reserve District”
(=連邦準備地区ごとの現行経済状況に関する要約)です。
数字中心の経済指標とは異なり、**企業や銀行、地域経済関係者へのヒアリングに基づいた「現場の声」**をまとめたもの。
FRBが金利政策を決める FOMC(連邦公開市場委員会)前の判断材料として活用されます。
🏙️ ベージュブックの内容
報告は、全米12の連銀地区(ニューヨーク・シカゴ・ダラスなど)から集めた聞き取りをもとに作成され、
主に次の分野に分けてまとめられます。
分野 | 内容の例 |
---|---|
雇用 | 労働需要、賃金上昇、人手不足など |
物価 | 仕入れ・販売価格の動き、価格転嫁のしやすさ |
消費 | 小売・旅行・外食などの支出傾向 |
住宅 | 住宅建設・販売・金利影響 |
製造業 | 生産・需要・在庫状況 |
金融 | 貸出需要・信用動向・金利環境 |
📆 公表スケジュール
ベージュブックは 年8回(およそ6週間ごと) に発表されます。
FOMCの約2週間前に公表されるため、次の政策判断のトーンを読む材料として注目されます。
🗓️ 2025年の発表日と結果まとめ
公表日 | 主な内容・傾向 |
---|---|
1月15日 | 経済活動はおおむね横ばい、不透明感あり |
3月5日 | やや鈍化、企業投資や消費は慎重姿勢 |
4月23日 | 一部で上向きも、関税・貿易不安が継続 |
6月4日 | わずかに減速、価格上昇圧力が継続 |
7月16日 | 横ばい~わずかに成長、不確実性続く |
9月3日 | 経済は概ね変わらず、関税・物価上昇が懸念 |
次回のベージュブックは 10月15日(予定) に公表される見通しです。
💬 市場への影響は?
結論として、ベージュブック単体で大きく相場が動くことはほぼありません。
これは、報告書が数値データではなく「聞き取り・コメントベース」であるためです。
ただし、FRBがどんな経済認識を持っているかを探るヒントにはなり、
特に「雇用・物価・企業の景況感」に関する記述が注目されます。
過去の反応例(ドル円)
年・月 | 平均変動幅 | 市場の反応 | 主なテーマ |
---|---|---|---|
2024年7月 | ±0.2円未満 | ほぼ無風 | 雇用安定・物価鈍化 |
2025年3月 | ±0.4円 | ややドル安 | 消費鈍化・価格上昇圧力 |
2025年6月 | ±0.2円未満 | 横ばい | 関税懸念・コスト増 |
📈 一部の投資家は、ベージュブックで「景気減速」や「インフレ鈍化」の兆候が出れば、
「FRBが利下げに動くかも?」と読み取り、ドル安・株高方向に反応することがあります。
🔍 投資家が注目するポイント
- 雇用・賃金動向
→ 賃金上昇はインフレ要因、利上げ継続のサイン。 - 物価・価格転嫁
→ 企業がコストを消費者に転嫁できる=インフレ根強い。 - 地域ごとの差
→ テックが多いサンフランシスコ、エネルギーのダラスなどで違いが出る。
✍️ 筆者のまとめ
ベージュブックは、相場を一気に動かす“爆弾指標”ではありません。
しかし、FRBの思考の背景を読むための“地図”のような存在です。
市場は「次の一手」を常に探しています。
たとえ動きが小さくても、その文脈を理解しているかどうかで、
ニュースの“読み解き力”に差が出てきます。
📎 参考リンク
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