本日12時50分に発表された日銀の金融政策決定会合では、金利据え置きとETF・J-REIT売却開始が決定しました。
午後には植田総裁の会見、さらに高市氏の総裁選立候補会見も予定されており、相場にとって注目度の高い一日となりそうです。
発表内容
- 政策金利:現状維持(短期金利 約0.5%)
→ 前回会合と同じ水準で据え置き - 賛成/反対:7対2で据え置き決定、2名はさらなる引き締めを主張
- ETF/J-REIT:売却開始を正式決定
- ETF:年3,300億円ペースで段階的に売却
- J-REIT:年50億円ペースで売却 - 声明文:「金融市場と経済への影響に十分配慮しつつ、緩やかな売却を実施」
ETF・J-REITとは何か
- ETF(上場投資信託):株式指数などに連動する投資信託。個別株ではなく指数連動型だから、日経平均型やTOPIX型など市場全体の動きに近くなる。
- J-REIT(日本の不動産投資信託):不動産を所有・運用して収益を投資家に分配する基金。建物や土地などからの収益が元になる。
これらは「リスク資産」とされ、株式などと同様に価格変動・流動性の影響を受けやすい。
📊 日銀がこれまで持っていたもの(保有状況・規模)
- 日銀のETF簿価残高は約 37.19兆円。J-REITは約 6,550億円。簿価ベースの数字。note(ノート)
- このETF・REIT保有が日銀の総資産に占める割合はおよそ 5.2%。ETFが約5.14%、REITが0.09%。note(ノート)
- ETF購入政策は2010年から始まり、「異次元の金融緩和」の一環で大きく拡大。株式会社QUICK:Our Knowledge, Your Value. -+2NEXT FUNDS+2
- なお、これまで日銀はETF・J-REITを買い入れて市場を支えてきた。株価下落の際の“下支え”機能が期待されていた。NEXT FUNDS+2note(ノート)+2
保有対象/対象銘柄の内容
日銀がこれまで買い入れてきた/保有しているETF(およびJ-REIT)の特徴は以下の通りです:
対象指数/ETFの種類 | 内容 |
---|---|
TOPIX(東証株価指数)型ETF | 東証一部を中心とした上場株をほぼ網羅。時価総額で株価動向を比較的忠実に映す指数。 |
日経225型ETF | 225銘柄で構成された裕福で流動性の高い大型株中心。銘柄入替あり、価格加重型。 |
JPX-Nikkei Index 400 | 指数採用基準が「企業価値」「ガバナンス」「資本効率」が比較的高い企業を選ぶような設計。成績・財務体質が良い企業の比率が高め。 |
その他特定テーマ型(補助的) | 以前、「企業価値(EV)」「女性活躍」などテーマ型ETFも対象に含まれていたことがあります。 ([turn0search2]NEXT FUNDS) |
具体的には、野村アセットマネジメントの「NEXT FUNDS」シリーズなどが典型例で、たとえば:
- NF・TOPIX ETF(銘柄コード 1306) NEXT FUNDS
- NF・日経225 ETF(1321) NEXT FUNDS
- NF・企業価値ETF(1480) NEXT FUNDS
- NF・JPX400 ETF(1591) NEXT FUNDS
- NF・日本株女性活躍ETF(2518) NEXT FUNDS
ポイント整理
- 売却対象銘柄は「保有中のETF全般」
→ 特定の銘柄を選んで売るのではなく、日銀の保有ポートフォリオを基準に、簿価ベースで年3,300億円分ずつ分散して売却する計画です。
→ TOPIX型ETF(1306など)、日経225型ETF(1321など)、JPX-Nikkei 400型ETF、企業価値ETFなど、かつて買入対象だった主要ETFが含まれます。 - 特定銘柄の検証は現時点では発表されていない
→ 「どのETFからどれだけ売るか」という詳細な内訳や、売却順序は日銀から公表されていません。
→ 「市場への影響を最小化するように配慮する」という言及があるのみで、個別銘柄の選択や優先度は伏せられています。 - J-REITも同様
→ こちらも特定銘柄名は出ていませんが、日銀保有のJ-REIT残高全体を対象に、年50億円規模で売却していくとしています。
実務上の売却イメージ
- 実際には「TOPIX型→日経225型→JPX400型」など保有比率に応じて、少しずつ機械的に売却していく形になる可能性が高いです。
- 日銀は「価格への急激な影響を避けるため、マーケットインパクトを考慮して売却する」と明言しているため、特定銘柄をまとめ売りして市場を揺らすようなやり方ではないと見られます。
🔍 なぜ今、ETF売却を始めるのか(背景・理由)
- 市場では「金融政策の正常化」の方向性が強まっており、長期的なバランスシート縮小の一環として、ETF・J-REIT売却が避けられないとの見方。Reuters+1
- 2024年にETF購入は停止されており、これまで“保有のみ”だった資産をどう出口させるかが注目されていた。日本オリンピック委員会+1
- さらに、株価が高値圏にある中で、「日銀の買い支え期待」が市場に過剰な安心感を与えていた可能性。その期待を少しずつ調整することがリスクヘッジとして慎重に検討されていた。野村証券+2株式会社QUICK:Our Knowledge, Your Value. -+2
筆者のまとめ
今回は発表が50分ほど遅れたことで「何かサプライズがあるのでは?」と市場が一時円高方向に振れましたが、結果は金利据え置き。
日銀のこれまでの動きを見ても、金利変更のときは事前にリークや観測報道が出ることが多く、据え置きは予想通りだったといえます。
ただ、今回ETF売却の具体的な開始が正式に発表されたのは大きなポイントでした。
これまで“言及だけ”されてきたテーマが、ついに実行フェーズに入ったということで、円買い(ドル売り)方向に反応が出たのは自然だと思います。
個人的には「利上げはしたくないが、別の手段で市場を正常化させたい」という日銀の意思表示のように感じました。
このタイミングが中長期的なトレンド転換の合図になる可能性もあると見ています。
ここ数年続いた円安から、円買い・ドル売り方向への流れが強まるシナリオも十分考えられるでしょう。
このあと15時頃の総裁会見で、ETF売却のスピード感や今後の金融政策スタンスがさらに明確になるかもしれません。
今日の発表は「次の一手」を考えるきっかけになる重要な日だったと思います。


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