現在のアメリカでは雇用統計が悪化し、失業率も上昇傾向。
さらに各地でデモが発生したり、地政学リスクが高まったりと、市場が揺らぐニュースが続いています。
こういう時によく耳にするのが「スタグフレーション」という言葉です。
さらに「リセッション(景気後退)」という言葉も同時に出てきて、バブル相場なのに生活は苦しいという人が増えている今、頭の中が混乱する人も多いはず。
今回は、スタグフレーションとは何か、リセッションとは何が違うのかを整理し、
今の相場とどう向き合うべきかを考えていきます。
スタグフレーションとは
スタグフレーション(Stagflation)は、
- 景気が停滞している(スタグネーション)
- それでも物価が上昇している(インフレーション)
という、経済にとって最悪の組み合わせを指します。
通常は景気が悪化すると物価は下がるはずですが、スタグフレーションでは景気も悪く、物価も上がるため、家計も企業も二重に苦しむことになります。
リセッションとスタグフレーションの違い
よく景気が悪くなるとリセッションとスタグフレーションという言葉が投資家の間で飛び交います。似ている用語ですが違いをみていきましょう。
リセッション(景気後退) | スタグフレーション | |
---|---|---|
状況 | 景気が落ち込み、物価は下がる | 景気が落ち込み、物価は上がる |
原因 | 需要減少、企業の投資縮小 | 原油高や物流停滞などの供給ショック+金融緩和 |
金融政策 | 利下げが有効 | 利下げすると物価上昇を助長するリスク |
投資への影響 | 株は下がるが、債券や現金が安全資産に | 株も債券も売られ、コモディティ(ゴールドや原油)が買われやすい |
過去に起きたスタグフレーションの例と政策対応
1970年代:オイルショック期
- 何が起きたか:原油価格が急騰 → 世界的に物価上昇 → 失業率上昇
- 政府・中央銀行の対応
- 当初は景気を支えるため利下げ → さらにインフレ悪化
- 後に金利を一気に引き上げ(米国ではボルカーFRB議長が政策金利20%近くまで引き上げ)
- インフレを強制的に止め、長期不況を乗り越えた
2021〜2022年:コロナ後の供給制約期
- 何が起きたか:物流停滞・半導体不足 → 物価急騰、景気回復鈍化
- 政策対応
- FRBは金融緩和を急停止し、急速に利上げを実施
- 2023年以降はインフレが落ち着き、再び金利調整(利下げ検討)に
スタグフレーションをどう解決してきたか
- 短期的には痛みを伴う:金利引き上げ、需要を抑え、物価を落とす
- 中期的には供給サイド改善:エネルギー供給拡大、物流再構築、生産性向上
- 長期的には再成長サイクルへ:インフレが収まった後に利下げし、景気を再加速
今回スタグフレーションを回避するには?
- 供給側の改善:原油増産、物流正常化、供給制約の解消
- 段階的な金融政策:利下げと同時に物価を抑える施策(補助金や価格調整)
- 構造改革:生産性を高め、コストプッシュ型インフレを抑制する
つまり、単なる利下げだけでは解決しません。「景気回復」と「物価抑制」の両立が求められます。
今のアメリカ経済と利下げの影響
2025年現在のアメリカは以下の状況です。
- 雇用統計が弱く、新規失業保険件数も増加傾向
- CPIやPPI(インフレ指標)は落ち着きつつもまだ高止まり
- FRB(米連邦準備制度理事会)は年内利下げをほぼ織り込み済み
もしここで利下げが行われると
- 景気は下支えされる(企業や個人が借りやすくなる)
- ただしドル安になりやすく、輸入品の値段が上がり、物価がさらに上昇する可能性
- 株は一時的に上がるかもしれないが、インフレが再燃すると再び下がる危険も

つまり「景気は守るけど、物価が上がるリスク」も背負うことになるのです。
スタグフレーションで起きやすい各セクターの動き
- 株式市場:景気敏感株(自動車、住宅、不動産、旅行など)が下落しやすい
- 債券市場:インフレ懸念から売られ、長期金利が上がりやすい
- ゴールド(金):安全資産として買われやすく価格が上がりやすい
- 原油・エネルギー:インフレ要因でもあるが、供給がタイトならさらに値上がり
- 通貨市場:ドル安になりやすいが、円やスイスフランなど安全通貨が買われるとは限らない(最近は円が弱いケースも多い)
筆者のまとめ✍️
私は、今回も同じサイクルをたどる可能性が高いと考えています。
今はまだ「景気を冷やすフェーズ」であり、利下げが入れば一時的に株価は上がるかもしれませんが、インフレが再燃すれば再び引き締めに戻るかもしれません。
投資家にできることは、歴史を知り、どのフェーズにいるのかを意識しながらポジションを取ること。
過去と同じく、スタグフレーションは終われば次のチャンスが来る——この視点を持っておくと焦らずに相場を見られると思います。


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